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12月, 2021の投稿を表示しています

隙間攻める日本のレーザー加工 スタートアップが微細化技術

  レーザー加工機とはレーザーで切断や溶接、彫刻、マーキング、穴あけなど様々な加工を行う機械の総称です。この加工機では主に CO2 レーザー、 YAG レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーが使用されています。 従来はレーザー加工は、 CO2 (炭酸ガス)レーザーが多く使われていました。今も CO2 は多いのですが、光ファイバーを用いた ファイバーレーザーは、 CO2 (炭酸ガス)レーザーや YAG レーザーよりも効率が良く、少ない電力と小型の装置でハイパワーを出すことができます。高出力で加工スピードが上がり、これまでできなかった加工も可能。ということもあって、高度な用途で普及が進んでいます。 高度な加工というと、具体的には 近年、鉄鋼厚板の溶接、リモート高速溶接、電池ケース薄板の溶接、異材接合、太陽電池の分割パターニング、炭素繊維強化プラスチック( CFRP )の切断などの用途開発が活発です。 レーザー加工システムは 国内ではサポートが充実しているアマダ、ヤマザキなど国内の加工機メーカーが非常に強いです。一方レーザーのコアである レーザー光源や発振器を含めたシステムは、大手では IPG 、コヒレント、トルンプといった欧米メーカーが強いです。日本のメーカーも頑張っていますが、いまいち存在感が薄くなっています。 往年のレーザー加工が日本のお家芸だったのを知る身としては寂しい限りです。 というわけでこの日経の記事では、世界の巨人たちに挑むレーザーのスタートアップ企業を紹介しています。光学系は相当のノウハウと開発資金が必要だと思い込んでいたので、スタートアップ企業の立ち入れる余地があるというのが意外でした。が、ニッチで先端の部分で攻めているようです。 隙間攻めるレーザー加工 スタートアップが微細化技術 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06EF70W1A001C2000000/?n_cid=SNSTWT&n_tw=1634243428 ※出典 日経デジタル 例えば スペクトロニクス (大阪府吹田市)。「短波長ピコ秒レーザー」。いきなり最先端です。短波長で、ピコ秒というダブルの最先端で攻めています。短波長をパルスで集中すると極めて微細な穴の加工ができます。 短波長のメリットは,従来の波長では直径

曲がる折れる!すごいぞ樹脂基板

  出典:NewsSwitch   2 方向へ電波放射可能なミリ波 5G 用アンテナモジュール、村田製作所。 メトロサーク生かした L 字型      https://newswitch.jp/p/20973 5G のミリ波は、到達距離が短く、しかも範囲が狭いため、スマホ側のアンテナは複数のアンテナを組み合わせたアンテナアレイやビームフォーミングにするか、さもなくばアンテナを複数にするかの選択肢が一般的でした。 今回の製品はその形状に注目。普通はアンテナ素子かアンテナ線が一般的ですが、樹脂多層基板によって L 字形状を実現している。これによって、 90 度異なる 2 方向への電波放射しています。 出典:村田製作所 「メトロサーク」という技術は、要するに折り曲げ可能な樹脂基板。 通常の多層基板は樹脂と銅箔、接着剤をビルドアップ工法によって製造するが、メトロサークは独自の積層技術と有機技術を組み合わせ、一括プレスによる製造を実現。柔軟性があって曲がる基板といえば FPC( フレキシブル基板 ) がありますが、メトロサークは 折り曲げた状態を保持できるため、コイルやコンデンサーなどの機能を印刷技術で付与できることも特徴。   「メトロサーク」は 08 年に開発を始めたそうなのですが、技術流出を懸念して 10 年以上公表を避けてきた技術。当初は iPhone だけに限定供給していたそうですが、 2017 年あたりに技術を公表。技術的に難易度が高いため一時期は歩留りや不良率の問題が発生して経営にも影響を与えたという、いわくつきの技術。歩留りなども改善されたのでしょう。 5G 端末の需要も大きいことから、今回ついに広く発売を開始するようです。 村田製、「折り紙基板」に吹く 5G の追い風 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50849880Q9A011C1000000/ 折り曲げ可能でしかも強度もある基板というのは、技術的にもデザインの自由度からもすごく魅力的ですね。この製品写真を見ると、ヒンジがついてるようにみえますね。単に 2 枚の基板をヒンジで組み合わせたわけではなさそうですし、実物を詳しく観察してみたいところです他の部品も内蔵したり実装したりできるようですので応用性も高そうです。曲がる基板というこ

ハンコ文化ならでは?半導体、ハンコ製法で逆襲 キオクシア・キヤノン実用へ

先端半導体の回路を描くために不可欠な「露光技術」で日本企業に逆転の目が出てきた。キオクシア、 キヤノン 、 大日本印刷 はハンコを押すように回路を形成する「ナノインプリント」を 2025 年にも実用化する。露光分野でシェアを奪われてきた日本勢が再び存在感を高められそうだ。 という記事。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC10DEC0Q1A910C2000000/?n_cid=SNSTWT&n_tw=1634502628 あれあれ? 半導体製造機器は、日本が世界で戦える少ない分野、と思ってきましたが。 調べてみると。 記事によると 2020 年の半導体製造装置メーカートップ 15 、日本勢は 7 社がランクイン とあります。 https://news.mynavi.jp/article/20210325-1839872/ 出典:VLSIresearch トップ 10 のうち、日本企業 ( 日本に本社を置く企業 ) は TEL 、アドバンテスト、 SCREEN 、日立ハイテクの 4 社、トップ 15 社のうち日本企業は、この 4 社に加えて Kokusai Electric 、ニコン、ダイフクの 7 社がランクインしている。 確かにランキングだけを見ていると、日本頑張ってるなあ、という印象。 気になるのが「露光分野でシェアを奪われてきた」の部分。 露光分野というのは、半導体の土台であるシリコンウエハーに回路をつくる工程。回路パターンを形成した原版(フォトマスク)越しに光をウエハーに当てて 2 次元の回路パターンを形成します。半導体の内部回路を構成するもので、 7nm 、 5nm など狭いピッチが進む 半導体を製造するうえで最も中枢といえる工程です。 現在、半導体露光機メーカーとして残っているのは、日系企業であるニコンとキヤノン、そしてオランダの ASML の 3 社。 2000 年以前、先端微細化プロセス向けの半導体露光機市場におけるシェアは、ニコンが ASML を上回っていた。しかし、徐々に ASML が拡大し 2010 年頃には ASML がシェア約 8 割、ニコンは約 2 割と立場が大きく逆転したそうです。 今日では 線幅が微細な先端半導体は「極端紫外線( EUV )」と呼ばれる技術を用いた装置を露光

100年に一度の大変革は、自動車部品業界にも

  電動化に向け自動車業界からは目が離せません。OEM(自動車メーカー)もそうですが、自動車部品業界にも 100 年に 1 度という変革が訪れています。   自動車メーカーと直取引する — つまりクルマの中身を実質つくっている Tire1 メーカーのなかでも、グローバルな自動車部品メーカーになってくると、メガサプライヤーと呼ばれるくらいに規模も発言力も大きく、有力なメガサプライヤーは、そこらの自動車メーカーなんぞよりはるかに規模が大きかったりします。   そんな自動車部品メーカーですが、自動車メーカーは今や市場の変革の大風をもろに受けて変革を迫られています。 EV 化が進むことで不要な自動車部品がたくさん出ること。これまで日本の自動車製造ではお家芸だったケイレツ ( 垂直 ) モデルの再構築 ( 悪い言葉でいうと崩壊 ) 。オープン化とグローバル化。受注産業から提案型開発型経営への改革。   この 10 年で一番わかりやすいのが業界の再編が進んでいることです。                                                                                        この数年はコロナでなかなか行けませんが、自動車技術関係の展示会などに行くと、行くたびに見知らぬ自動車部品メーカーがでっかい展示をしているのに出くわしました。 「あれ?こんな会社あったっけ。欧州のローカル企業、あるいはインドとか?」。 そう思って説明を見たり、ネットで調べたりすると 業界なら誰でも知ってる有力メーカーが複数社 統合した新会社だと分かって、びっくり。「うっそー」というのが正直な感想。創業半世紀以上の有名自動車部品メーカー同士が統合・合併・吸収。そんなに簡単に行くわけがないのに。 20 年前、いや、 10 年ちょっと前だったら考えられない話です。   おっさんのゲームファンだったら、スクウェアとエニックスが合併したり、バンダイとナムコが合併したり、という、ありえないと思われていたゲーム業界再編のショックがいま自動車部品業界でまさに起こっている、と思っていただければ。   たとえば日本の自動車部品メーカーだけに限っても。 かつて日産系であったカルソニックカンセイが、フィア

木からクルマ?夢の素材CNF(セルロースナノファイバー)とは?

  最近よく耳にする夢の新素材「 CNF 」について勉強してみました。 CNF は セルロースナノファイバーの略です。 もともとは木。木から繊維質を取り出します。これを重ねていくことで紙ができるのは、ご存知の通り。 紙は軽くて丈夫な素材ですが、これをもっともっと細く微細に行うことで限りなく軽く、丈夫にすることができます。この 木材繊維をナノレベルまで解きほぐした素材が CNF( セルロースナノファイバー ) です。 CNF は鋼鉄と比べても、重さは5分の1と軽く、しかも5倍の強度を持ちます。 軽さや丈夫さ以外にも、木材由来で入手しやすく、製造時の CO2 排出量が少ないなど多くの特長があります。 自然由来、再生可能、リサイクルと、まさに脱炭素時代やリサイクル社会にぴったり、というわけで「夢の素材」と呼ばれています。 ※ CNF の電子顕微鏡写真  出展:京都大学 出展:環境省 木を材料にするということで、森林資源の乱獲や乱開発がちょっと心配になります。が、現実は国内では、使いみちのない樹木や 伐採材など 廃棄されるばかりでリサイクルされない森林資源がほとんどらしいのです。それを有効活用しようというのも背景にあるようです。 CNF は、政府環境省も SDGs や環境対策としてキモ入りの素材です。 https://cnf-ncm.net/index.html 軽量、高強度、高環境性ということで、 CNF は自動車、家電、建築などの分野で、すでに活用が始まっています。 この他に 様々な産業ビジネスでの応用利用が期待されています。 ことに自動車での採用が目立つようです。 自動車は軽量化が変わらぬ課題です。燃費や電費を高める ( 航行距離を伸ばす ) 。材料コストを下げる。などが背景にあります。 CNF を車体のいろいろな場所に使うことで、強度を維持しながら大幅な軽量化ができます。 CNF の自動車での搭載場所  出展:京都大学、環境省 木からクルマを作るというと、いまだに車体に木材を使用している英国のモーガンなんかが思い浮かびます。でも木で作ったクルマは、ロマンありますよね。   軽量で高強度である特長を活かして、こうした自動車分野への適用の他に、家電など電子機器一般、住宅・建築などさまざまな分野への応用が期待されています。ま

ロボットの「ケーブル問題」に福音? ロボットアーム向け無線電力伝送システムを開発

  千葉大学は 10 月 5 日、ロボットアーム向けの無線電力伝送システムの開発に成功したことを発表しました。負荷に関わりなく一定電圧を伝送できるため、特別な制御装置を必要とせず、システムを単純化できる可能性がある、としています。   無線電力伝送は、コイルを介して無線で電力を供給し、電池を充電したり、モーターやセンサーを動かしたりするもの。いわゆる「置くだけ充電」のこと。スマホや小型家電では一般的。産業用では AMR (無人搬送機)などにも使われ始めています。 電気自動車の充電にも可能性があり大きな注目を集めている技術です。   今回の発表は、産業に使われる多関節ロボットの関節部分のモーターにこの技術を使用することで、最大のメリットは、ロボットの自由度がはるかに向上するということ。   ケーブルの取り回しはロボット設計のボトルネック まず、ロボットは関節部のモーターやハンドに電力を供給したり、制御したりするために、通信ケーブルや電力ケーブルで接続されています。 このケーブル類の取り回しが意外と大変。 ロボットの通信ケーブルや電力ケーブルは関節に合わせて曲がらなければなりません。とはいえ、ケーブルには強度や電力の問題から、ある程度太さが必要。そのため屈曲にも限界があります。また何度も曲げを繰り返すため寿命もあります。多関節ロボットは複雑な動きをするためにケーブルがねじれたり絡まったりして断線するリスクもあります。ケーブルが外側に露出しているため、設計時に取り回しに苦労もします。本体は接触しなくてもケーブルが接触するという危険性もあります。それを避けるために、近年の人とともに働く協働ロボットや医療用や半導体用のロボットでは、ケーブルを内蔵しているタイプもあります。しかしボディの中に収納するため内部機構と干渉するなど設計時の苦労も多いそうです。   ケーブルレスロボットの可能性も そういうおじゃま虫だったケーブルをなくすことができれば、ロボットの形状が抜本的に変わる可能性があります。というわけで各部のモーターに直接ワイヤレスで給電できれば、ケーブルレスとなり、こうしたケーブル問題は抜本的に解決する可能性があるわけです。   さて今回のワイヤレス給電技術の背景ですが、近年、 1 つの送電装置から複数の機器に電力を供給できる多出力システムや、中継器(ホップ)を介して遠くまで

コロナ禍で一気に進んだウェビナー参加 そして現実イベントへの回帰要求

マーケティングオートメーションの大手 シャノンから「企業の情報収集とウェビナーの参加状況に関するアンケート」が発表されました。 https://www.shanon.co.jp/corporation/news/2021/10/04.html これは、企業の製品導入における情報収集や選定に関わる人を対象に、 2021 年 9 月に実施したアンケート。情報収集や選定を行う時の、接触媒体を調査したもの。今年は特に、コロナ禍におけるウェビナーと現実のイベントに対して、利用者がどのように考え、行動しているかを明らかにしたものになっています。 ウェビナーへの自発的な参加者が 2021 年には 5 割以上に増加 出展:シャノン 「自発的に参加」(オレンジ色)と回答した人は 2020 年が 37.2% 、 2021 年は 50.7% 。ウェビナー参加に積極的になってきたようです。 出展:シャノン 「 2020 年と比較して 2021 年は増えた」と回答した人が 7 割を占めました。コロナの状況下で、ウェビナーは非常に一般的な情報収集手段になったようです。自分も昨年に比べてさらに増えました。参加することに抵抗がなくなったというのもあるかと思います。自分の例でいえば、情報を詳しく得るには現時点ではウェビナーがベスト、という仕事上の必要もありました。また、イベントに行けないため情報に飢えているというのもあったと思います。 現実イベントへの回帰要求も 出展:シャノン セミナーが 32.5% 、ウェビナーが 23.0% とセミナーが 10% 近く優勢、という結果が出ました。 この回答は少し意外でした。 朝の出勤・通勤や、顔を付き合わせての商談や会議と同じで、コロナが落ち着いても「もう戻れない」ものと予測していましたが、意外なことに、実際のセミナーへの参加欲求は旺盛だということです。 デジタルのチャネルであるウェビナーが普及した一方で、アナログのチャネルであるセミナーへの回帰傾向が表れています、と調査ではしています。 情報収集チャンネル全体が増加傾向 情報収集チャンネルの変化は表の通り。どれがというよりも、数字をすべて足した結果が増加してい