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未来技術遺産に選ばれた溶接機と樋口泰行氏

  溶接機と言えば金属加工の代表的なものの1つ。金属と金属を接合するうえで欠かすことができません。建設といった大規模なものから、自動車、家電、さらにはミクロン単位が要求される超精密なハイテク機器までに使われています。 ニュースによれば、このたびパナソニック コネクトの溶接機 2 機種が、国立科学博物館の「令和 4 年度 重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に認定されたと発表がありました。 1985 年発売のトランジスタインバータ制御 CO2/MAG 溶接機「 YD-350HF 」と、 2000 年発売のフルデジタル直流 TIG 溶接機「 YC-300BM1 」。 技術遺産に選ばれるくらいですからかなり昔の機種。しかしこういう設備はびっくりするほど長く使われるものですので(実際まだ PC98 のフロッピーモデルが工場で使われているケースもあります)、調べてみると、どちらも製造現場ではまだまだ現役で使われているようです。レジェンドでありながらまだまだ現役という偉大な存在なわけです。 出典 パナソニック コネクト https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2209/15/news085.html 記事の中では開発の経緯や苦労話が語られているわけですが、インタビューに答えているのが、当時開発を主導したパナソニックコネクトの社長の樋口泰行さん。世紀末から 2000 年代の IT がらみでは実に懐かしいお名前。 というのも、この樋口さんはパソニックを一時退職し、ボストン・コンサルティングやアップル、日本ヒューレットパッカード( HP )、ダイエーなどを経て、日本マイクロソフトの社長を 10 年務めました。その後 2017 年 4 月にパナソニックに復帰しパナソニック コネクト(当時はパナソニック コネクティッドソリューションズ社)の社長を務めておられます。 2007 年から 2017 年というと、マイクロソフトが Google などの対抗策として一気にさまざまな分野に拡大特にマイクロソフト日本の社長、マイクロソフトの副社長としていろんなところに出てきておられたので、樋口さんというマイクロソフトの印象が強いのではないでしょうか。それがまた松下 ( パナソニック ) に復帰されて、最初に開発した溶接機が遺産に選ば
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日本の半導体製造は強いのか弱いのか?の答え

半導体製造装置と言えば、日本の製造業のなかでも数少ない世界的なトップシェアを持つマーケットと言われています。その一方で、かつては日本のお家芸であった半導体製造装置の日本の位置は低下を続けているという意見もあります。両極端の意見が並び立ち、一体どちらが本当なのだろうと長い間疑問に思っていました。 その疑問に答えてくれる記事がありました。 「日本の前工程装置のシェアはなぜ低下? ~欧米韓より劣る要素とは」という記事。 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2208/19/news038.html   基本として半導体製造は大雑把にわけると前工程と後工程があります。 前工程は、シリコンウェハーに回路を形成するまでの工程で、トランジスタ形成や露光による回路形成、成膜など。 後工程は、回路が形成されたシリコンウェハーを半導体チップに切り出して、実際の IC ・ LSI として出荷するまでの工程を言います。   記事によると、このうち前工程装置のシェアが 2013 年頃から急低下していることが判明しています。 データから読み取れることは、確かに日本には特徴的にシェアが高い装置分野がありますが、その市場規模は決して大きくないニッチな市場に限られる、ということだそうです。確かに市場規模が大きな、たとえば露光装置や CVD 装置といったマーケットではシェアの小ささが目立ちます。 一方、 100 億米ドルを超える市場規模の装置分野では、欧米の装置メーカーがシェアを独占していることが分かります。こちらの前工程の部分では、 ASML 、 Lam Research 、 Applied Materials といった世界的な大手がほぼ独占的なシェアを持っています。 前工程装置の企業別シェア、日米欧のシェア、市場規模( 2021 年) 出所:野村証券 このあたりが実情のようです。 記事によるとマーケティングにより成長分野にリソースを絞り、オープンアーキテクトとして各社のさまざまなソフトや技術を取り込んで、ひとつの世界標準をつくり上げていったところにダイナミックな成長の源泉があった、としています。これに対してこれまで日本メーカーは経験や職人芸によって各社向けにきめ細やかに対応してきたが、この方法も改めるべき時が来

通販の電子部品でロケット開発?

デジキーのオリジナル動画シリーズ。デジキーは電子部品の通販サイトなのですが、コンテンツとしてオリジナル動画も投稿しています。電子工作から先端技術のレポートまであって見応えがあり、自分でも何か作れるのではないかと思わせる魅力があります。 今回のは「宇宙ロケットの電子回路開発」というシリーズ動画。  https://www.youtube.com/watch?v=zgh_4sCTWQc インターステラテクノロジズというロケット開発会社とのコラボ動画です。 同社は「普通のメーカーが作れる部品を使って世界一低価格でコンパクトなロケットを作ること」をミッションとして宇宙や宇宙輸送をもっと身近な存在にすることを目標に掲げています。ホリエモンこと堀江貴文氏が創業者ということでも有名です。 https://www.istellartech.com/teaser/index.html ロケット打ち上げサービスは世界規模では結構たくさんあるようですが、日本でも民間であの程度の形になってきたのは頼もしいところです。   今回のデジキーとのコラボ動画では、ロケットをゼロから開発するという雲をつかむようなテーマに対して、どのようなコンセプトであたったのかを紹介しています。 数々の失敗動画も公開しており、宇宙開発の歴史は失敗の繰り返しであったことを改めて思い起こさせてくれます。 普通のメーカーが作れる部品、すなわち誰もが入手可能な部品でロケットを作るわけで、そんなことはそもそも可能なのかと思ってしまいます。 電子工作ユーザーに向けて話しているため、とても平易な説明をしてくれているのですが、高度な制御が必要なロケットも、基本の基本は電子工作で制作するロボットと同じという視点です。 制御はデジキーで購入できる FPGA のマイコンボードやジャイロを使っているとのこと。センサーやカメラも同様だそうです。ロケットの制御装置というと先端技術の頂点というイメージでしたが、そうした部品の組合せで実際に打ち上げを成功させてしまうのがすごいと思いました。たいへん面白く参考になる動画です。

日産初の軽EV「サクラ」誕生。軽EVは国内車の主流となるか。

  出典:NISSAN 日産自動車は、新型「軽 EV 」日産サクラ」 を発表しました。 日産からは「日産サクラ」、三菱自動車からは「 eK クロス EV 」として発売され ます。 軽自動車 EV は従来のガソリン車の軽自動車サイズの車両を EV 化したものです。税金などは現時点では軽自動車のが適用されます。将来はモーター主力に応じた分類基準が必要とされ、実際草案まであるようですが、今はまだ導入されていません。 価格 233 万 3,100 円で、国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金 (55 万円 ) を利用した場合、 178 万 3,100 円から。さらに地方自治体の EV 補助金も利用可能で、東京都の場合は 45 万円が補助されるため、差し引き 133 万 3,100 円で購入できます。 出典:NISSAN 搭載する駆動モーターの最大出力は軽ガソリン車「デイズ ターボ」と同等の 47kW (約 64 馬力)ですが、最大トルクはデイズの 100Nm に対して約 2 倍となる 195Nm で、すばやく力強い走りと静粛性を実現しているそうです。 バッテリー容量は 20kWh 。日産でいうとアリア EV が ( 65kWh ・ 90kWh ) なのでかなり少なめに設定。 航続距離は 180km(WLTC モード ) 。ウィークデイに買い物など日常生活で使用し週末に一晩充電するような利用スタイルを想定しているといいます。普通充電時間は 8 時間で、急速充電時は約 40 分で 80 %を充電可能。 軽自動車は日本国内では 4 割程度のシェアを占め、取り回しの楽さや低い車両価格と低い維持費から日常の足として欠かせないものになっています。軽自動車 EV は非常に要請が高かったものです。高級車から一般車まで EV 化が進んできて、ついに軽に EV が登場してきました。 日産と三菱が先行しましたが、今後は軽自動車メーカーも続々と参入することが確実とされます。  

魚は陸で捕れるもの?陸上養殖の事業化進む

陸上養殖とは 陸上養殖とは魚を 陸地で魚を育てるものです。陸の上で育てるわけではなく陸地に設けた養殖プラントで魚を育てる養殖方法です。 プラントの場所は別に海の近くである必要はありません。山の中など内陸部でも海産物を生産できます。またデパートの地下にプラントを作れば、店頭で魚を安価で販売できるようになります。流通倉庫内にプラントを作ればインターネットからの注文でその日のうちに新鮮な魚を届けることも可能。魚の生産(漁獲)と物流を根本から変える可能性を秘めています。 これまでは陸上養殖は多くは実験的なものか小規模なものに限られていましたが、今後はひとつの漁業の形として食を支えていくことになりそうです。 水産物消費の実態――日本は魚離れではなく魚不足 近年、不漁のニュースが日常的になっています。水産庁の「令和2年度 水産白書」によれば、世界の魚介類消費は過去半世紀で約2倍に増加しています。世界的な食糧需要の高まりなどを背景に、魚の乱獲が止まりません。全世界の漁獲生産量を見ると 1985 年あたりから横ばいで伸びていない一方で、新興国を中心に魚類の需要は増加の一途をたどっています。 日本の漁業・養殖業生産量を見てみると減少の一途をたどり続けており、ピークだった 1984 年( 1282 万トン)と比べ 3 分の 1 近くまで減っています。 若者世代を中心に日本の魚離れが叫ばれて久しいですが、その実態は日本でも魚不足が常態化しているのです。 需要を補うため養殖産業は拡大が進み、今日漁業生産量の約半分を占めるまでになっています。しかし養殖にも課題もあります。魚類の需要が現在のペースで増えていくと、近いうちに養殖による魚類の供給も需要に追いつかなくことがはっきりしています。それは現在主流となっている海の一部を囲って行う海面養殖では、養殖に適している場所が限られるからです。 というわけで陸上養殖の事業化が推進されています。とはいえ陸上で大規模に養殖を行う場合、生産管理と品質安定の難易度は高いという難点があります。さらに1つの飼育法をほかの環境や施設で再現することが難しいという点も課題となっていました。 次世代の陸上養殖テクノロジー https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/mirai/h_vol40/ いま

企業の過去・現在・未来を描く価値創造ストーリー

近年企業の統合報告書や SDGs で「価値創造ストーリー」という言葉をよく見かけるようになっています。 「価値創造ストーリー」とは、自社ビジネスの成り立ちと、それが今後のチャンスやリスクをふまえて将来的にどのような価値を持続的に創造していくかを、投資家やステークホルダーに対して説得力を持って語るストーリーです。 財務・非財務の価値を統合的に説明する「統合報告」が一般的になってくると、その全体像を示すツールとしてこの言葉をよく使うようになりました。「価値創造ストーリー」は今や統合報告書の主要コンテンツとなっています。 いわば企業の過去・現在・未来の本質を誰にでもわかるようにシンプルなストーリー化する、というわけで、ちょっと考えただけでもやっかいな作業です。いくつかの企業では、企業ブランディングや CSR や SDGs 関係をお手伝いしている関係で、時おり経営企画や広報 IR の方から「いろいろ要素はあげてみたが、複雑すぎてまとまらないのでちょっと相談に乗ってほしい」という依頼が来ることがあります。 まとまらないのは無理もないとはお察しします。何十年も歴史のある企業ですから、いろんなビジネスを展開し拡げたり畳んだりしてきたことでしょう。またそのへんの事情や内実にもかなり詳しいでしょうし、思い入れも強いわけですから、自分の会社をシンプルに「こんな会社」とまとめるのは難しいのも当然のことです。さらに将来の事業機会に加えて、リスクの予測もしなくてはなりません。まとまりがつかなくなって、自分のような外部の人間から見て客観視してほしいというわけなのでしょう。 広報 IR 専門のコンサル企業さんに依頼すれば、慣れておられるので、まず間違いないものが出来上がります。しかしいろんな事情があって、自分のようなコンテンツ系の人間の意見も聞きたいのだろう、名誉なことだと思ってご相談に乗ります。 価値創造ストーリーの対になるものとして価値創造プロセス、価値創造モデルがあります。言語化したものがストーリー、 1 枚の図にまとめたものがプロセスやモデルです。プロセスやモデルの図に関しては、 IIRC--International Integrated Reporting Council (国際統合報告評議会)によってフレームワークが定められています。それに則った作り方をする

SF手法で新規事業創出 SFプロトタイピング

SF (サイエンスフィクション)は 科学的な空想にもとづいたフィクションの総称で、小説や映画やアニメの王道ジャンルのひとつです。 SF とビジネスという、空想と現実の両極端にあるものが、いま思わぬ融合を果たそうとしています。 近年、ビジネスのボーダーや枠組みがデジタルやネットワーク技術によって破壊され、企業は新たな事業の創出を強く求めています。新規ビジネスの創出や創発といわれる取り組みです。多くは経営部門肝いりで新規事業創出部門を設立し、コンサルと協力して、早期に新規事業のデザインと立ち上げを目指します。 よくある手法としては、自社の知的財産やコアコンピタンスの整理といった IP マッピングというプロセスを行います。とはいえ現在の知的資産をベースに、例えばオープンイノベーションでスタートアップ企業と協業した程度では短期的には事業は成功したとしても、永続性のある柱事業のようなものを生み出すことは難しいのが現状です。 ですのでそれとは別に、現在のトレンドや技術革新などの要素をもとに未来、十年から数十年後の未来社会の姿をデザインします。そのなかでどんなサービスや技術が活躍しているか、そして自社の分野や技術が活かせる可能性を分析します。そして未来社会の画期的なサービスや製品を実現するためには、どんな要素技術や技術革新を生み出していかなければならないかを分析し、その道筋(ロードマップ)をつくります。そしてそこに資本を集中していきます。   とまあ、こんな感じで事業創出アプローチを進めている企業は多いと思うのですが、ここで問題となるのが、自社の知的財産やコアコンピタンスは自社のことなので容易に把握できるのですが 、「これからの市場ニーズがわからない」「新たなテクノロジーが出てきても、それをどう新たな企画に結びつければよいのかわからない」このような悩みを抱えている方は多くいるのではないでしょうか。 新規事業創出ではいかに新しい価値を生み出せるかが肝要です。企業の中にいるとどうしてもアイデアが小さくなってしまったり、世代間で感じるリアリティにズレがありアイデアが理解されないというケースがあります。頭の凝り固まった企業内のメンバーでは「想像を超えた創造」を生み出すのは難しいものです。 また未来社会のシミュレーションは、 5 年後であれば想像は容易ですが、