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9月, 2021の投稿を表示しています

「スーパーカブ」はまだまだ進化を止めない ---新エンジンで環境性能向上

世界の、裕福ではない人たちに移動の自由を与えたカブ  出典:HONDA スーパーカブ、略してカブは日本では商業バイクとして主に使われています。  これを世界に目を移すと、発売以来60年を超え、世界で累計1億台というものすごい台数を記録しています。単一のバイクとしては世界一。世界で最も普及したモビリティ(乗り物)と言えるでしょう。 世 界では商業バイクとしてのみならず、生活の足として活躍しています。 T型フォードは車という移動手段を人類に与えた革新的な製品ですが、カブは裕福ではない世界のほとんどの人々に移動(モビリティ)の自由を提供した偉大な製品といえる。--「TopGear」という海外の自動車番組で出演者がこんな発言をしていました。 カブに対する史上最大の称賛だと思いますし、自分もまったく同感です。   何度目かのカブのブーム  カブはその独特なスタイルと、誰でも買える気軽な二輪車として、昔から一定のブームがありました。 伝説的なバンドであるビーチ・ボーイズは1964年に「リトルホンダ」という曲をリリースしましたが、リトルホンダとはスーパーカブのこと。   国内では、やはり出前や配達に使う2輪としてダサいと思われていることは否定できません。  国内でもカブのファンが増える要因がありました。  きっかけとして 「水曜どうでしょう」のカブの旅  劇場アニメでもカブはガジェットとして何度も登場  またバイク回帰の中年ライダーも、家族にバイクはあぶないからダメと反対されますが、そこで「カブならいいか」ということになります。そうしてカブをカスタムする人も周囲に多いです。  「スーパーカブ」という女子高生のカブ乗りの話も最近話題になりましたね。小説、漫画 アニメにもなってひそかなカブブームを引き起こしているとか。   カブの魅力  カブの特長や魅力はたくさんあります。   まずは、丈夫なエンジン。壊れない車体。「人類の技術ではカブは破壊不可能」。これは確か、ばくおん!というバイク漫画のセリフだったでしょうか。   街の自転車屋でも修理できるほどシンプルなメカニズム。バイク屋さんがあればなお確実。万が一の時も必ず修理できるという安心感は、遠乗りの時 絶大なものがあります。   問題のスタイルだって、ハンターとかクロスカブを見ていると、かっこよく見えてくるから不思議です。   今回

小さくなるほど性能がアップするコイル?「創発インダクター」とは

「体積は従来品の 10 万分の 1 で、インダクタンスは同水準」 思わず二度見してしまったニュースです。   理研、「創発インダクター」の室温動作に成功 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2108/23/news030.html 不勉強で、まったく知らない技術でした。 インダクターはコイルのこと。伝統的なものは巻き線をしたり、巻き線せずに積層や薄膜やフォトリソを使ってコイルを形成するものもあります。コイルは電力や電圧を変換したり、スマホの中で余分なノイズをなくしたりする製品です。 で、ここで取り上げられている「創発インダクター」。らせん磁気構造に電流駆動すると、電流と同じ方向に「創発電場」が発生する。この創発電場を用いたインダクター素子を創発インダクターと呼ぶそうです。 従来のインダクターとは異なり、素子を小さくするとインダクタンスが増大するというもの。 創発インダクターの原理(出典:理研) ここでハテナが頭の上を飛び交います。 誘導起電力の大きさは、コイルの巻き数の 2 乗とコイルの断面積に比例するため、強いインダクタンスを得るためには素子のサイズが大きくなってしまうのが 常識。なので大きなインダクタンスが欲しい時は大きなコイル(インダクタ)を使うのが常識。 素子を小さくするとインダクタンスが増大するというのは、まるで魔法みたいです。   創発インダクターは、 2020 年に初めて実証されましたが、らせん磁気構造を保持できる温度が約 20K (- 253 ℃)以下。それが今回、 室温での動作に成功しました。 YMn 6 Sn 6 の単結晶と作製した創発インダクタ素子 今回の試作品は市販品に比べ素子の体積は 10 万分の 1 でありながら、インダクタンスは 1 μ H 。市販のチップコイルでいえば 2 ミリ程度の製品の性能が出てることになります。 すごいなー。   スマートフォン ( スマホ ) やウェアラブル機器などの小型軽量化 、高機能化、 省電力化要求は留まるところを知らないので、創発インダクターはとても夢のある技術と言えそう。 実用化にはまだまだ時間がかかるとは思いますが、進展があったらここで紹介してみたいと思います。

ラズパイは電子工作界のベストセラー

IoT といえばセンシング。 センシングに小型ボードコンピュータの「 Raspberry Pi (ラズベリーパイ、略してラズパイ)」を活用する人は多いです。 ラズパイはこんなやつです。 小さくて子供の手のひらに余裕で乗ります。ですが世界 800万個以上が売れた 電子界のベストセラーです。(写真は raspberrypi.orgより) こんな小さくてもちゃんとコンピュータしています。扱いやすく機能も充実、しかも低価格ということで、電子工作愛好者から試作機、実用機まで広い層に使われています。作例も多くネットを調べればなんとかなる、というのも安心ポイント。   作例の記事があったので読んでみました。 作ったのはバルブ開閉のチェックシステムです。使う時はバルブを開け、使用後には閉める。単純なバルブの開閉のチェックですが、問題はバルブが 100 か所あること。 手作業では管理しきれない。通常こういう場合は、工場だったら間違いなく電磁弁で遠隔制御して閉めるのが確実。しかしかなり高額になるのでラズパイを使って自作することにした。という作例です。 買うと高い、世の中にない、入手も面倒→「じゃあ自分で作っちゃえ」。そういう発想は大好きです。   ここで主人公が選んだのはカメラを使って画像解析してバルブの開閉を検知する方法。 具体的にはバルブの矢印の方向を画像解析して開閉を検知します。   なるほど、アナログチックなアプローチだなあ、と思ってちょっと感動してしまいました。 そういえば以前、古いアナログメータしかない設備を IoT 化する時に、矢印や数字をカメラで読み取ってそれを OCR で数値に変換するというソリューションがあったのを思い出しました。 すごく地道な方法で洗練はされていませんが、後付けできて、設備の追加導入も最小限ですむ。「これで事は足りるし、これで全然いいじゃん」と思ったものです。 というわけで矢印を読み取って方向を解析するわけですが、このとき撮影した画像から開閉を判断する画像認識アルゴリズムが一番重要になります。そこで作者は OpenCV の画像認識を選びました。 OpenCV は インテルが開発・公開したオープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリです。形状のマッチングや図形の検出などが標準ライブラリに用意さ

オン抵抗6mΩ品など耐圧750VのSiC FET

SiC もしくは SiC デバイスとは「パワー半導体」と呼ばれる半導体のタイプ。 難しいことなしで言うと、機器や設備を省エネ、高効率にするすぐれもの。 条件さえ整えば、ですが現在の電力ロスを数十分の1くらいにまでできるものです。 いきなりマニアックな製品から始めてしまったものです。 でも CPU やスマホ用の半導体に比べると、マニアックな製品に見えますが、モータ機器、インバータ、車載、バッテリー、電力設備,電車、ロボット、蓄電、家電にも欠かせない。 電子技術者だと電源、モータ関係やってる人は少なから ず関わるはず。 ということでニュースによれば 米国 UnitedSiC は 2021 年 9 月 15 日、耐圧 750V でオン抵抗が 6m Ωと小さい SiC (炭化ケイ素) FET を発表しました。競合する SiC MOSFET 製品に比べオン抵抗は半分以下。すごい。 ちなみにオン抵抗を競合他社の半分にするとありますが、オン抵抗とは MOSFET を動作(オン)させた時のドレイン・ソース間の抵抗値。これが高いと電力が熱になってロス、どこかに消えてしまうわけです。 SiC の電力損失抑制競争はけっこうシビアに展開してますが、これどうやったんでしょうね。 構造は SiC JFET とシリコン MOSFET の 2 チップをカスコード接続して、ワンパッケージ。 なるほど設計者は都合に合わせてよいところどりできるハイブリッド製品のようですね。 耐圧 750V 品を用意。耐圧増えると応用分野ぐっと広がります。また回路設計のマージンが生まれます。 SiC や GaN はいま電源系ではビビっと来る話題なので、ついついニュースを読んでしまいます。