先端半導体の回路を描くために不可欠な「露光技術」で日本企業に逆転の目が出てきた。キオクシア、キヤノン、大日本印刷はハンコを押すように回路を形成する「ナノインプリント」を2025年にも実用化する。露光分野でシェアを奪われてきた日本勢が再び存在感を高められそうだ。
という記事。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC10DEC0Q1A910C2000000/?n_cid=SNSTWT&n_tw=1634502628
あれあれ?
半導体製造機器は、日本が世界で戦える少ない分野、と思ってきましたが。
調べてみると。
記事によると
2020年の半導体製造装置メーカートップ15、日本勢は7社がランクイン
https://news.mynavi.jp/article/20210325-1839872/
出典:VLSIresearch
トップ10のうち、日本企業(日本に本社を置く企業)はTEL、アドバンテスト、SCREEN、日立ハイテクの4社、トップ15社のうち日本企業は、この4社に加えてKokusai Electric、ニコン、ダイフクの7社がランクインしている。
確かにランキングだけを見ていると、日本頑張ってるなあ、という印象。
気になるのが「露光分野でシェアを奪われてきた」の部分。
露光分野というのは、半導体の土台であるシリコンウエハーに回路をつくる工程。回路パターンを形成した原版(フォトマスク)越しに光をウエハーに当てて2次元の回路パターンを形成します。半導体の内部回路を構成するもので、7nm、5nmなど狭いピッチが進む半導体を製造するうえで最も中枢といえる工程です。
現在、半導体露光機メーカーとして残っているのは、日系企業であるニコンとキヤノン、そしてオランダのASMLの3社。
2000年以前、先端微細化プロセス向けの半導体露光機市場におけるシェアは、ニコンがASMLを上回っていた。しかし、徐々にASMLが拡大し2010年頃にはASMLがシェア約8割、ニコンは約2割と立場が大きく逆転したそうです。
今日では線幅が微細な先端半導体は「極端紫外線(EUV)」と呼ばれる技術を用いた装置を露光工程に使っており、世界でオランダのASMLのみが手がけています。
このへんの原因に関しては下の記事が詳しいです。
半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1803/02/news039.html
両社に差がついた原因は、ニコンの垂直統合モデルと ASMLのオープン・汎用モデルの差にあったようです。
5nmの登場とともに、今後とも先端半導体ではプロセスの微細化化がさらに進んでいきそう。先端プロセスにおける露光分野のASMLの天下はまだ続いていきそうです。
5nmルールを採用したスマホ向けのプロセッサが登場し、今後はPCやサーバー向けにも降りてくるでしょう。インテルやAMD やTMSCといった半導体製造装置大手も2022年以降に大きな設備投資を予定しています。おそらくはこうした最先端プロセスの採用も含まれているのでしょう。
というわけで、日本が強い半導体製造装置分野、というのは本当。ただし、最先端プロセスだけが半導体というわけではありませんし、どの工程が優れているというわけでもありませんが、
最先端の露光装置分野では勝負になっていない、というのが事実のようです。
ということで元記事に戻ります。
キオクシア、キヤノン、大日本印刷が開発したナノインプリントは、3次元のパターンを形成したマスクをウエハー上にある感光材の液体樹脂に押しつけながら光を当てて回路パターンを焼き付けるという方法です。ハンコを押すように回路を形成します。
三次元パターンのハンコを使う利点。NANDフラッシュメモリは3D形状で立体的に積み重ねる構造をしているため、従来のように平面フォトマスクを使うと非常に多くの工程が必要となる。立体形状のハンコだとそれが減らせるということのようです。
※出典:日経デジタル版 |
ナノインプリントは、2025年の製品化を目指しています。NANDフラッシュメモリ、マイコンなどのロジック、DRAMへの採用を狙っているようです。現時点で15nm相当に対応するが、今後さらなる微細化も狙う。15nmプロセスというと、現在使われているフラッシュメモリやSSD、かなり高性能なマイコンなどにも適用できそうです。
※出典:日経デジタル版 |
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