千葉大学は10月5日、ロボットアーム向けの無線電力伝送システムの開発に成功したことを発表しました。負荷に関わりなく一定電圧を伝送できるため、特別な制御装置を必要とせず、システムを単純化できる可能性がある、としています。
無線電力伝送は、コイルを介して無線で電力を供給し、電池を充電したり、モーターやセンサーを動かしたりするもの。いわゆる「置くだけ充電」のこと。スマホや小型家電では一般的。産業用ではAMR(無人搬送機)などにも使われ始めています。
電気自動車の充電にも可能性があり大きな注目を集めている技術です。
今回の発表は、産業に使われる多関節ロボットの関節部分のモーターにこの技術を使用することで、最大のメリットは、ロボットの自由度がはるかに向上するということ。
まず、ロボットは関節部のモーターやハンドに電力を供給したり、制御したりするために、通信ケーブルや電力ケーブルで接続されています。
このケーブル類の取り回しが意外と大変。
ロボットの通信ケーブルや電力ケーブルは関節に合わせて曲がらなければなりません。とはいえ、ケーブルには強度や電力の問題から、ある程度太さが必要。そのため屈曲にも限界があります。また何度も曲げを繰り返すため寿命もあります。多関節ロボットは複雑な動きをするためにケーブルがねじれたり絡まったりして断線するリスクもあります。ケーブルが外側に露出しているため、設計時に取り回しに苦労もします。本体は接触しなくてもケーブルが接触するという危険性もあります。それを避けるために、近年の人とともに働く協働ロボットや医療用や半導体用のロボットでは、ケーブルを内蔵しているタイプもあります。しかしボディの中に収納するため内部機構と干渉するなど設計時の苦労も多いそうです。
ケーブルレスロボットの可能性も
そういうおじゃま虫だったケーブルをなくすことができれば、ロボットの形状が抜本的に変わる可能性があります。というわけで各部のモーターに直接ワイヤレスで給電できれば、ケーブルレスとなり、こうしたケーブル問題は抜本的に解決する可能性があるわけです。
さて今回のワイヤレス給電技術の背景ですが、近年、1つの送電装置から複数の機器に電力を供給できる多出力システムや、中継器(ホップ)を介して遠くまで電力を伝送できる多ホップシステムの研究が進んでいて、無線電力伝送の実用化が進んできました。
しかし、無線電力伝送では、伝送遅延による性能劣化と、多出力システムの場合、その制御のために多くの情報をやり取りする必要があり、複雑性が増大してしまう点も課題となっているそうです。
そこで研究チームは、制御装置を使うことなく、モーターやセンサーの負荷の変動に即応して、常に一定の電力を供給する「負荷非依存動作」の仕組みを開発。実際に、2ホップ2出力で実験を行ったところ、負荷が変わっても一定の出力を保ち、高効率を維持できることが確認された、ということです。
これにより、今後、多様なアプリケーション向けに応用できるようになる、と研究チームでは説明しているほか、システム複雑化の問題を抜本的に解決できる技術となるともしています。
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