レーザー加工機とはレーザーで切断や溶接、彫刻、マーキング、穴あけなど様々な加工を行う機械の総称です。この加工機では主にCO2レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーが使用されています。
従来はレーザー加工は、CO2(炭酸ガス)レーザーが多く使われていました。今もCO2は多いのですが、光ファイバーを用いたファイバーレーザーは、CO2(炭酸ガス)レーザーやYAGレーザーよりも効率が良く、少ない電力と小型の装置でハイパワーを出すことができます。高出力で加工スピードが上がり、これまでできなかった加工も可能。ということもあって、高度な用途で普及が進んでいます。
高度な加工というと、具体的には近年、鉄鋼厚板の溶接、リモート高速溶接、電池ケース薄板の溶接、異材接合、太陽電池の分割パターニング、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の切断などの用途開発が活発です。
レーザー加工システムは 国内ではサポートが充実しているアマダ、ヤマザキなど国内の加工機メーカーが非常に強いです。一方レーザーのコアである レーザー光源や発振器を含めたシステムは、大手ではIPG、コヒレント、トルンプといった欧米メーカーが強いです。日本のメーカーも頑張っていますが、いまいち存在感が薄くなっています。
往年のレーザー加工が日本のお家芸だったのを知る身としては寂しい限りです。
というわけでこの日経の記事では、世界の巨人たちに挑むレーザーのスタートアップ企業を紹介しています。光学系は相当のノウハウと開発資金が必要だと思い込んでいたので、スタートアップ企業の立ち入れる余地があるというのが意外でした。が、ニッチで先端の部分で攻めているようです。
隙間攻めるレーザー加工 スタートアップが微細化技術https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06EF70W1A001C2000000/?n_cid=SNSTWT&n_tw=1634243428
※出典 日経デジタル
例えばスペクトロニクス(大阪府吹田市)。「短波長ピコ秒レーザー」。いきなり最先端です。短波長で、ピコ秒というダブルの最先端で攻めています。短波長をパルスで集中すると極めて微細な穴の加工ができます。
短波長のメリットは,従来の波長では直径4マイクロ(百万分の1)メートルが限界とされているが、スペクトロニクスのレーザーは半分の2マイクロメートルとより小さな穴を開けられる。加工の効率も3割向上するそうです。
2つ目のメリットはレーザーの発光時間。ピコ(1兆分の1)秒単位と極めて短い時間間隔で光を繰り返し照射します。強いエネルギーの光を使うと、例えばナノ(10億分の1)秒で当ててガラスに穴を開けようとすると亀裂が入ってしまいますが、ピコ秒なら問題なく開けられ、熱によるダメージを抑えられます。結果、狙った場所にピンポイントでムラなくきれいな加工を施せます。ガラスなど従来は難しかった材料でも微細に加工できるようになるということです。
短波長化は266nmを実現しており、これは世界でもトップトップクラス。
短波長分野は、ピコ秒(1兆分の1秒)からフェムト秒(1000兆分の1秒)で、今、世界の大手が先端技術として提供している技術。一番せめぎあいをしている分野で、勝負を挑もうとしています。
次は医療向けの紹介するシンクランド(川崎市)が開発した注射針「マイクロニードル」。
レーザー加工により、直径30マイクロメートルという超極細の穴を針に貫通させているそうです。
※出典 日経デジタル
昔話題となった「痛くない注射針」(岡野工業)が穴の直径が90ミクロン、外径が200ミクロン-蚊の針と同サイズだったのが、短期間で長足の進化しているものです。
最後に紹介されているのが、KOALA Tech(コアラテック、福岡市)。こちらは有機半導体レーザーの実用化に挑んでいる企業。メディアでもたまに見かける企業です。半導体レーザーは、任意の波長の光を作り出すために,波長変換結晶を使う必要がありました。
有機半導体レーザーダイオードは有機材料を使った発光素子で、電気から直接特定の色のレーザー光を出すことができます。人の目で見える可視域からセンサー用途で使われる近赤外域まで波長を任意に決められることで、広い汎用性のレーザー装置を開発することが可能になります。また製法が比較的簡単なためコストを抑えられることもメリットです。
※出典 日経デジタル
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