UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)をご存じでしょうか。数年前から物流系のイベントやセンサ系の展示会でしばしばUWBを利用した位置検知や移動検知のシステムを目にするようになりました。「懐かしい」「まさかUWBの名を再び聞く日が来るとは」と懐かしさで胸がいっぱいになると同時に、長い雌伏の時を経て、捲土重来、ついに日の目の当たる時が来たんだなと、不思議な感慨を覚えたものです。
UWBの20年ぶりのおさらい
ではUWBについて、久しぶりに――約20年ぶりになりますか――少しおさらいしてみましょうか。
UWBの特徴は、数百MHzから数GHzという非常に広い帯域を使用して、ここにきわめて短い時間に大きなピーク出力の波形(インパルス)を使ってデータ通信することです。1ns(ナノ秒)という短い時間長のパルスを使います。
高速通信が可能、あるいは高精度な屋内測位が可能、あと超広帯域であることから他の無線との干渉が少なく、周波数割り当てを意識する必要がないなどといった特徴から、夢の無線通信として2000年代前半に大いに脚光を浴びました。
次世代を担う無線通信規格として期待を集めたものの、無線LANの高速化、ZigbeeやBluetoothといった他の近距離無線通信の普及などがあって、大きな期待とは裏腹に普及には至りませんでした。やがて表舞台から消えていき、次第に話題にのぼることも少なくなっていきました。
AirTagでまさかのUWBリバイバル
それが潮目が変わったのが2019年。まさかまさかの出来事がUWB に訪れます。2019年9月に発表されたiPhone 11がUWBを搭載したのがきっかけです。アップルは2020年発売のiPad、Apple Watch、そしてiPhone 12にもUWBを採用しました。2021年に発表した紛失防止タグ「AirTag」はヒット商品になったのが記憶に新しいところです。アップルがUWBを採用したことで、一気にUWBは位置情報サービスの主流へと躍り出ました。
「AirTag」 出典:Apple
日本では屋外利用が2019年5月に一部帯域で解禁されたことも、国内での普及の追い風になっています。
超高速のパルスを使用していることによって高精度測位測距位が特徴で、センチメートルレベルの位置検出が可能です。
広帯域(500MHz以上)通信をするため、他の無線規格やノイズの影響を受けにくい。
超広帯域を使うことによって高いセキュリティが可能。
産業用としては高精度でリアルタイムの屋内位置情報システムとして
工場・倉庫で、作業者の動態管理、安全管理、物品や設備の位置検出、
オフィスで、従業員のロケーションや人員数の検出
店舗での商品配置分析お客様の動線分析
病院や高齢者施設で居場所確認や見守り
などにすでに使われています。
UWB自体は近距離通信が主なので、BluetoothやWiFi と組み合わせて使われるのが一般的なようです。
新たなマーケットとして自動車への搭載も期待されています。
衝突防止用レーダ、パーキングアシスト、レーンチェンジアシストにUWBが採用される例も増えています。
また自動車のスマートキーの電波を盗むリレーアタックの対策としてUWBを使う例も増えています。
車載ネットワークにもUWBは大きな可能性がある、としています。自動車のシステムが情報化・電動化とともに複雑化しており、車内に搭載されるケーブルをすべてつなげると普通車で数km、電動部品や制御系が複雑な高級車なら10kmにもなるといいます。車体の軽量化、省資源化の面からもケーブルを少なくすることが急がれています。そのため車載ネットワークの無線化も検討されており、そこに超高速、高セキュリティのUWBが有力な候補となっています。
かつて一世を風靡して流星のように消えていった一発屋が、実力をためて再び大舞台で脚光を浴びるような、そんなサクセスストーリーを思わせるUWB。日本人の感性に響くテクノロジーとして陰ながら応援していきたいです。
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