工場の現場の設備では「予知保全」という言葉が今ホットなトピックスです。
予知保全というのは、工場の機械や設備に故障が発生してから対処するのではなく、故障の予兆を把握して、故障を未然に防ぎ、機械や設備を安定して稼働させることです。
故障や不具合が起きてからの対処では、原因の究明や切り分け、対処方法の検討、業者への依頼などで、半日なり数日なり生産が止まってしまい生産計画に狂いが生じて多大な損失が生じることになります。また異常な状態のまま生産を続けると品質が低下します。そこで事前に検知して故障や不具合が発生する前に対処して、生産を止めないようにするわけです。
予知保全と予防保全
予知保全と似た言葉に「予防保全」という言葉があります。予知保全も予防保全も、トラブルが発生する前に対処するものですが、予防保全は部品や設備が壊かもしれない使用回数や時間を決めておき、その時期が来たらあらかじめ部品交換などのメンテナンスをして故障を未然に防ぐものです。
例えば車のメンテナンスでいうと、「〇〇Km走ったら交換」が予防保全、異様な傾向が出始めたら交換が予知保全ということになります。
予知保全は、センサーとIoTなどで機器の正常に動いている状態を把握して、故障や機能停止につながる異常な状態を検知するのが一般的な方法です。
予知保全では「異常な兆候の検知」が重要になります。何らかの数値を常時モニタリングし、一定以上のしきい値を超えた場合など「いつもと違う状態」を異常の発生する兆候ととらえます。
とはいえ、いつもと違う状態なのはわかったとしても、どこに原因があるのかを把握すれば対処は早くなります。ただ、原因までを把握するのは従来では難しいこととされていました。
原因すら予知する
そこで、東芝は機器の「異常検知」に加え、従来は困難だった「異常発生の原因」となった物理現象を提示できるAI(人工知能)技術を開発したと発表しました。
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2111/05/news063.html
複雑なシステムでは、異常発生のメカニズムも複雑になることが多い。今回開発したAI技術は、センサから得た機器の時系列データと独自のアルゴリズムを用いて、物理モデルを生成し原因を究明するものです。現実の製品や機器をサイバー空間で再現する「デジタルツイン」の応用ということができます。
出典:東芝
東芝によれば、実際の例として、多数のパワーデバイスやプリント基板、冷却フィンなどから構成されるパワーモジュールでの例が挙げられています。3Dモデルを用いた詳細な数値シミュレーションによる温度予測の結果とほぼ同等の高い精度になったとしています。
数値シミュレーションモデルは計算時間が長くかかりますが、自動生成した物理モデルは数千~数万分の1と極めて短いのでリアルタイムに物理モデルを生成し続けることが可能になります。
出典:東芝 |
センサーからの機器のさまざまなセンサーデータを受信し続けることで、実機のリアルな状況を反映した物理モデルを生成。その内部の状態や変化を詳細に見ることで、どこで、何が原因で、どんな異常が発生しつつあるのかを予測することができます。この技術が普及すれば、不具合の予測だけでなく、どの箇所で発生し何が原因かが明確にわかることになります。対処がより迅速になり、予知保全の質がさらに上がることになります。
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