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知能を持ったセンサ?



IoT
センサー端末の消費電力を1000分の1に低減できるかもしれない――。

https://ednjapan.com/edn/articles/2103/18/news001.html

すごいショッキングなメッセージで釘付けになった記事です。センサに知能を与える、というアプローチです。STマイクロエレクトロニクスの「機械学習コア搭載MEMSセンサー」。

へー。センサーにAIをつけるというのは確かにアイディアですね。端末に機能をまかせるということでしょうか。

プローブの分散と中央で処理というIoTの本質と一見逆行するようにも見えますが、どんなものなんでしょうか。

 

エッジコンピューティングの背景

社会の至るところでモノのインターネット(IoT)化が進展するなか センサーの設置数が増え続けます。

センサーで取得した情報を全てクラウドに転送してしまうと、その情報量は膨大なものになります。クラウドへの通信量が膨大になり、通信帯域を圧迫し、遅延が発生し、リアルタイム性が損なわれる、などの事態が発生します。

そのためセンサー側、エッジ側である程度の処理を担う「エッジ・コンピューティング」が登場してきました。そうすることで、リアルタイム性を確保したり、クラウドへ伝送する情報量を圧縮したりします。

いまエッジコンピューティングが注目されている所以です。

自動車、スマートファクトリー、社会インフラ、物流、金融、身近な家電まで、知らないうちにエッジコンピューティングが導入されつつあります。

しかしながら課題もあります。

センサの種類が増加すると、解析・処理のためのソフトウェアの種類も増えます。すると開発者の開発負荷増大します。そのため、エッジ側で機械学習やAIを実装して処理しようとします。これをエッジAIと呼びます。

 

問題は消費電力の増大

もうひとつ問題があります。

それはエッジ端末でのデータ処理負荷が増えれば増えるほど、消費電力量は増大します。

エッジ端末の多くはバッテリー駆動です。処理や稼働時間が増えれば当然バッテリー稼働時間は短くなってしまいます。するとバッテリーの充電や交換の手間、メンテナンスの手間がかかります。しかし、そもそも遠隔地では交換が困難なものもあります。もともとIoT端末はボタン電池 乾電池で10年、というのが、昔からの決まり文句です。これは困ったことになりました。


機械学習コア搭載MEMSセンサー

機械学習コア搭載MEMSセンサーの機能ブロック
(出典:STマイクロ)


そういう背景から生まれたのが、STマイクロエレクトロニクスの「機械学習コア搭載MEMSセンサー」。

MEMSセンサーに機械学習処理を行うハードウェア回路コアを搭載したデバイスです。エッジセンサー端末の消費電力を従来比100分の1から1000分の1程度低減できる というからすごいですね。

これまでIoT用デバイス側で超低消費電力マイコンとか バッテリ管理やスリープ時の電力ロスを削減などのデバイスありますが、ここまでの効果をうたったものは初めてみました。

従来のエッジAI端末のマイコンは、センサーが動作している間プロセッサを常時動作しなくてはなりません。超低消費電力マイコンでも少なくとも数百マイクロアンペアは消費してしまいます。

機械学習コア搭載MEMSセンサーでは、センサー自身でセンシング結果を解析。マイコンを常時動作させる必要がありません。センサーが異常を判断すると、マイコンを起動させて、アラートを発報させる仕組みだそうです。

機械学習コアの動作時消費電流は、一般的な例で数マイクロアンペア。マイコンの数百分の1というわけです。

問題はAIである「機械学習コア」の性能ですが、ここには一般的な予測モデルである「デシジョンツリー」を搭載して判断を行うそうです。

用途としては、高性能6軸モーションセンサーや予知保全用センサー端末を開発中としています。

通常のエッジAI 用の機械学習ライブラリや開発ツールであれば、かなり用意されていますが、ディシジョンツリーを使ったシステムが、通常の機械学習とは違うのかが不安になります。とはいえシンプルに構築できるようですので、AIに教育したりソフトウェア開発の負荷も少ないとしています。

 

将来性は?

センサという エッジの、さらにエッジ(エンドポイント)にAI機能を持たせる。つまりはエッジコンピューティングのある意味理想の姿、ということになるでしょうか。

まだ評価ボード段階なので、感想はあまり控えたいところですが、ただ問題はやはりサイズ。設置面積で設置自由度が減る。だけでなく見えない目立たないということがIoTのひとつのトレンドですのであまり大型化はしてほしくないな、と。

そしてシステムの複雑化。センサ側の自律システムとエッジコンピュータ本体のシステムが同居するわけなので、システム複雑化の手間が増える危惧があります。

それからIoT用センサの宿命として最終的にはやはり「コスト」からは逃れられないと思います。

とはいえ、電力消費が数百分の1から1000分の1というのは、分野によっては大きなソリューションになりそうです。

 

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