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アドビも、ついにB2Bマーケティングに本気出してきた

アドビというと、Photoshopillustratorといったクリエーター系のソフトの印象がいまだ強いかもしれません。

自分もそうだったので、10年以上前になりますか、アドビが「Adobe Marketing Cloud」と銘打ってマーケティング分野に参入してきた時、かなり驚きました。その誕生の経緯からクリエイティブ系のツールベンダーという印象があったので、畑違いの分野への参入だったわけですから。その後、Adobe Experience Cloudにサービス名称を変え、それからECプラットフォームであるMagentoMAの大手であるMarketoを取り込むなど、積極的にマーケティングサービスを拡大。今日ではデジタルマーケティングは事業の柱となっているそうです。

アドビのデジタルマーケティング事業の全体像は不勉強で、あまり詳しく知りません。そこでよい機会ですので復習してみたいと思います。

アドビが考えるこれからのB2Bデジタルマーケティングとは?

アドビは新しいCDP(顧客データプラットフォーム)である「Adobe Real-Time CDP B2B Edition」の国内提供を開始しました。CDPというのは、顧客一人ひとりの属性データや行動データを収集・統合・分析するデータプラットフォームです。Google広告で今後禁止されるサードパーティーCookieに依存せずに、顧客プロファイルとジャーニー全体を1つのシステムでシームレスに管理できる「Adobe Real-Time CDP」をB2B向けにカスタマイズしたものだそうです。

よく知られているように、B2Cの購買プロセスはB2Bのそれはずいぶんと異なっています。これは個人ベースでの購入と企業ベースでの購買のプロセスや登場人物の差によるものです。そのためさまざまあるB2C用のマーケティングツールは、B2Bではなかなか活用が難しいものがあります。導入を検討していたB2B企業も、実際検討してみると、取引先企業の導入プロセスの実情を正確に把握できない、ということで暗礁に乗り上げてしまうことも多々見てきました。

今回のアドビの「Adobe Real-Time CDP B2B Edition」はB2B企業向けにカスタマイズされたプラットフォームで、企業間取引に対応したもの。B2B企業がB2C企業のようなマーケティング施策を容易に実現できるようにするものです。高度化を続けるB2Cのデジタルマーケティングと、遅れ気味だったB2Bのデジタルマーケティングのギャップを埋めるものとして期待されています。

ファーストパーティーデータでいかに顧客・見込み客のニーズを理解するか

調査によれば、B2B企業の方が、この2年コロナ禍で直面している最も大きな課題は、新規商談および対面営業の減少です。そこでB2B 企業では、デジタルでの顧客接点にシフトし「オンラインセミナー(ウェビナー)」「オンライン商談」「SNSの活用」「オンライン広告」といったデジタル関連のチャネルに対する投資額を増やす傾向が顕著です。対面営業の依存度を下げざるを得なくなった今、「いかにデジタルで顧客・見込み客の細かいニーズを理解していくか」がB2B企業の命題となっています。

ここで足を引っ張ってくるのが脱サードパーティーCookieの風潮です。個人情報保護の観点から、来年に向けて廃止は不可避となっているようです。そのためこれまでのように、オンラインでの顧客行動を追い続けるのは困難になってきているというマーケッターにはつらい状況が続きます。

となると頼りになるのは自社サイトでのデータ(ファーストパーティーデータ)のこれまで以上の活用になります。


B2B購買ならではの、複数の関与者をどう分析するか

ここで話は戻りますが、B2B購買プロセスの特長は、決裁までに複数人が介在することが多いことです。そのため一人の行動を追うだけでは意思決定のプロセスの全容は見えません。ここが従来のデジタルマーケティングツールでは対応できなかったポイントです。

Adobe Real-Time CDP B2B Editionは、アカウント単位、案件単位、個人単位で顧客プロファイルを多角的に一元管理することです。

もうひとつB2Bマーケティングにおいて悩ましいのが、一つの企業で複数人の行動があるため、これをいかに分析・集約するかです。マーケティング活動の評価をするうえで重要な事項に、アトリビューション分析という手法があります。これは例えば広告やメルマガがどれだけユーザーの行動に結び付いたかを示すものです。コンバージョンや購買に対しての広告やメルマガの効果の指標となるものと考えていいでしょう。B2Bにおいてもアトリビューション分析は重要です。しかし悩ましいのが、例えば最初に窓口となった一人の担当者をリードと見なして案件を管理していた場合、アカウント全体で見ると受注に至っていたとしても、リードベースでは失注していると捉えられることがあります。これはその人が初期の情報収集のプロセスのみに関与したからだと考えられます。このように個人の行動履歴だけにフォーカスしていては、途中で関与した人たちの行動を無視することになってしまいます。

逆に、契約者の情報をさかのぼって、過去にどんなマーケティング接触があったかを見た場合、本当は同じ会社の他の人が長く検討していたとしても、決裁者である最後の人の行動履歴は直前にしかないことから、超高速でクローズしたかのように誤解した分析をしてしまうことになります。これでは実情に対応したものとは言えません。

複数人が関わりながら徐々に契約に近づいていくB2Bマーケティングでは、購買プロセスと購買チームを全体としてとらえ、アカウント全体のジャーニーを可視化して、正しくマーケティング効果を測ることが大切といえます。

アカウント全体のジャーニーを可視化する(出典:アドビ)

これまでアドビはB2Cに強いイメージがあったが、今後はB2Bの領域も強化していくことになりそうです。B2BMAツールしてデフォルトになりつつあるMarketoを統合したことで、B2Bマーケティング領域でも、今後アドビの存在感は増していきそうです。



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