自動運転を支えるADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)。そのキーとなるのが、自動運転支援用のたくさんのセンサ。具体的にはミリ波レーダー、超音波、LiDAR(レーザーレーダー)、そしてカメラがあります。
たとえば最近発表されたホンダの全方位安全システム「ホンダセンシング360」を例にとると、全方位の死角をカバーするために、下記のようなセンサを搭載しています。
少し前に発売された新型レジェンドでは、このホンダセンシング360の上位システムにあたる「ホンダセンシングエリート」を搭載されています。下にあるように、さらに多くの、全部入りといっていいほどのセンサを積んでいます。
ホンダに限らず、各メーカーの上級モデルはおおむね、同様なセンサシステムを搭載しています。
安全対策は重要とはいえ、なぜ、こんなに多くの種類を、たくさん搭載しなければならないか。それは、それぞれのセンサが得意分野が異なり、長所や短所を持っているからです。このへんはちょっと自分でも混乱してしまうことがあるので、いい機会なので復習してみます。
最初はカメラです。
カメラの特長は視覚(映像)情報を得られること。映像をAIによって映ったモノの認識と識別(人か車か障害物か、など)ができます。またモノの移動状態、信号の色、道路標識や、道路状態など、人間の見た目に近い形で識別できます。ステレオカメラを使うとモノまでの距離を計測できることもできます。
自動運転支援ではフロントに搭載。(近年はリアに搭載する例も多くなっています。側面に搭載することも考慮されています)。またカメラと言えば、昔からあったリアのパーキングアシスト用、そのほかにも、ドライブレコーダーカメラも前後や車内を撮影するものも多くなってきており、こう考えると、車載のカメラ搭載数は増えていく一方ですね。
使いやすいカメラですが、夜間や逆光といった光の条件、さらには霧、大雨などの悪天候下には物体の識別が困難になることが弱点と言えるでしょう。
次はミリ波レーダーです。
ミリ波レーダーとは、30GHz~300GHzの周波数帯にあるレーダーのこと。これを使って、対象物との距離や速度、角度を測定することができます。
電波は直進性が非常に強く、100mを超える長距離でも届きます。車載センサとしては、光ではなく電波なので雨、霧、雪といった環境にびくともしないのも強みです。逆光でも暗闇でも物体をとらえることができます。また電波は物質を透過するため、物体を透過した検出も可能です。そして波長が短いため高精度で対象物を検出できます。
欠点としては、段ボールなど電波の反射率の低いもの、また近距離のものを検知しにくいというデメリットがあります。
より小さなものを検知したり、検知範囲を広くするには、分解能というものを高くする必要があり、それには周波数帯域幅を広げることが必要でした。が、従来、日本では使用可能な帯域幅が制限されていてそれが難しかったのです。ところが最近日本で解禁された60GHzミリ波レーダーでは、従来1GHzの帯域しかなかったところに、7GHzもの広い帯域が使用可能になり、高い分解能が可能になりました。
そのため、長距離の検知以外にも用途が一気に広がりました。対象物の微小な動き、歩行者や自転車などの小さな対象物も正確に検知できるようになりました。そして60GHz帯のミリ波レーダーでは、車外のセンシングにとどまらず、車内の乗員の動きのセンシング、ジェスチャ操作への応用が可能。さらにセキュリティ、ヘルスケアなどの用途にも期待が広がっています。
最後はLiDARです。
LiDARはレーザー光(赤外線)を照射することで対象物を識別するもの。レーザーを使うレーダーなので「レーザーレーダー」と呼ばれることもあります。
赤外線はミリ波レーダーよりも波長が短いため、ミリ波レーダーよりもさらに小さな物体を検知できるのが特徴。そして「3D LiDAR」を使うことで、対象物までの距離はもちろん、位置や形状まで正確に検知でき、周辺環境の3次元イメージ、いわゆる周辺地図を取得できることが強みです。対象や障害物が入り組んでいる市街地の自動運転には欠かせないものです。
ただし赤外線の減衰が激しいため長距離の検知はちょっと苦手です。車載技術ということで一般にはなじみのないものでしたが、近年iPhoneのカメラなどに搭載されて一気に有名になったセンサです。
この他にも従来から駐車時の障害物検知などで使われている超音波センサもあります。
このように多種のセンサが互いの長所弱点を補いながら、ドライバーの安全安心を守ってくれるわけです。そのぶんシステムはたいへんに複雑化していきます。
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