「じゃない方」のPLC
Cnetでこんな記事。
パナソニック、電力供給とデータ伝送を実現する「HD-PLC」は現代の二股ソケット
https://japan.cnet.com/article/35177089/
PLC。正直に言えば、そういえばそんなのあったなあ、という印象。
工場の制御関係のコンテンツの仕事をしていると、PLCというと、どうしてもプログラマブルロジックコントローラーになってしまいます。工場のPLCは大昔から現在にいたるまで超現役。もうひとつの通信の方のPLCはそれに比べると今は影が薄い感じです。懐かしテクノロジーという印象です。
では、まず、もうひとつの「通信の方の」PLCについてご紹介しましょう。
PLCとは――電力線と通信ラインをひとつに
PLCはPower Line Communication。電力線通とも言います。コンセントに差し込むだけでインターネットにつながる通信方式です。電力線にデータ信号をのせて送受信する仕組みです。
簡単に歴史をおさらいすると、電力線でデータ通信を行うというのはある意味利便性があり魅力的なコンセプト。昔は電力会社の制御や通信などに利用されていたそうです。そして2000年代を迎えてインターネットの「ラストワンマイル」が課題になると、PLCもその選択肢のひとつとして注目されました。その頃はいろいろと記事があり、製品も出て、かなり有望株だったと記憶しています。
ただ課題もありました。
PLCは電力線に通信を乗せる方式です。電力線は銅やアルミなどに絶縁や被膜を施した構造です。当然のことながら電力の伝達を目的にした構造なので、高周波信号が流れることを考慮していない。ノイズに対して強くない。ふたつの周波数の干渉でノイズが発生しやすく、データに影響を与える。外部の機器に影響を与える。さらに電力線は負荷や分岐がたくさんあるため、高周波の信号がひどく減衰してしまう、という課題がありました。
だったら、わざわざ家庭内や施設内の電力線を使わなくてもインターネットから家庭内・施設内LANでいいんじゃないだろうか、CATVインターネットや無線LANもこなれてきて、結局あまり普及はしなかったようです。
HD-PLCに普及の追い風
さてコンセプトは魅力的でしたがさほど普及しなかったPLDですが、HD-PLCという新しい規格とともに、捲土重来、普及が期待されていると言うではありませんか。一体どういうことでしょう。
普及の追い風のひとつが、スマートメーター・スマートグリッドです。電力消費量を送信するスマートメーターの普及が進んでいます。このスマートメーターの通信方法として、電力線に接続するだけで通信OKのPLCが採用される動きが広まっているそうです。確かにLPWAも有線インターネットも使わずにすむので設置や稼働も楽そうです。
もうひとつの強い追い風がIoTです。今後あらゆるモノや設備がインターネットにつながるIoTの課題として、通信網の確保と電力の確保があります。電力線と接続していればデータ通信が行えるHD-PLCは、IoTの普及に大きなソリューションとなる、というわけです。
電波法の規制緩和により、工場などで利用される600V以下の三相3線での使用が可能になったことに加え、鋼船での利用が認められ、利用範囲が拡大したことも追い風のひとつです。そのため屋外、広大な場所、既存建物など、これまで難しかった場所でのネットワーク構築がHD-PLCで可能になりそうです。
HD-PLC技術も進化しており、接続した端末を中継基地として情報信号をバケツリレーで送るマルチホップ技術を採用。これによって、前述のように分電盤などで信号が減衰して通信ができないといったデメリットを克服し、長距離通信も可能になりました。
既設の電線を使えるため配線工事コストを削減。無線LAN使用時に起こる設備や壁などによる通信障害も回避できる、としています。
出典: Panasonic
今後はWi-Fiが届かずLAN工事が難しいと地下や船舶、トンネル、工場、屋外といったシーンをターゲットにしている、と言います。
通信速度の実効値は20Mbps程度というのが課題になりそうですが、電力線と通信の統合というのはUSB-PDとも通底する魅力的なコンセプトであることに間違いはありません。20年の歴史を経て、今度こそ表舞台に名乗りを上げていただきたいものです。
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